作者:高木勇藏
所在:金沢
経歴:街の歴史研究家
趣味:植物栽培、写真
編集:刈本博保
つれづれなるままに

『古い辞書の価値』

 以前、古文書を読むために古い漢字が掲載されている辞書が必要となり、古本屋に辞書を買いに行った。店主に事情を話したところ、埃を払いながら一冊の古い辞書を探し出してきた。辞書の最終頁を見ると、昭和九年三月一日、第九十五版発行、定價金三円八十銭と書いてあった。店主に値段を聞いたところ五千円と言われた。その瞬間、三円八十銭の辞書を五千円で売るのか、高いなあと思ったが、必要な辞書であるので思い切って購入した。それから以降、辞書の値段のことが脳裏から離れることがなかった。

 最近知人に辞書の値段について話をしたところ、知人は次の話をしてくれた。
「その辞書を長く使ってきたのでしょう。ものは考えようで、五千円の辞書を一回しか使用しないのであれば、価値はそのままの五千円であるけれども、五百回使用すれば十円になり、今後さらに使えばただみたいになりますね」
なるほどと考えを改めさせられた一幕であった。