作者:馬鹿吐露
所在:金沢
つれづれなるままに

『占い~旦那~』

ここは、繁華街から少し奥に入った路地である。
「お~と、お待ちなさい」
占い師が旦那さんに呼び掛けた。
「あなたには女難の相がある」
振り返りながら、旦那が言った。
「なに」
占い師が大きな虫めがねを旦那の顔に当てて
「ここに座ればぴたりと当たる」
旦那が言う
「当たるも八卦、当たらぬも八卦って言うのだろう」
占い師が
「少しお手を拝見」
と言ったかと思うと旦那の右の手を軽くつかんで掌を虫眼鏡で見る。「これが運命線、あなたは死ぬまで生きるな」
「当り前じゃないか。俺は忙しいのだから」
「人生急いじゃ。福が逃げてしまう」
行きかけた足を止めて
「俺に福運がやって来るとでも言うのかい」
占い師がさらに手を覗き込んで、
「これが感情線。環状線。いや山手線。山手線でグーグル回るも。金は要らない。鐘は鎌倉。鎌倉行くのは江ノ電。絵の殿堂はルーブル。ルーブルはロシアのお金。ブルッブルット震えて、小便したけりゃ結構結構。結構毛だらけ、猫灰だらけ、けつの周りはクソだらけ」
旦那が痺れを切らして
「おい。俺の運はどうしたい」
占い師が答えて
「けつの周りがあまりにも汚いものだから、運はいまウオシュレットで流しましたよ」