<街の防災・減災>
 

     金沢市の防災・減災に対する提案

 1、はじめに

  1995年1月16日阪神淡路大震災では死者6434名、行方不明者3名、2011年3月11日東日本大震災では死者15880名、行方不明者2694名の大被害が発生した。またスマトラ沖の大地震では東南アジア各国に被害が広がり10万人以上の犠牲者が発生した。この状況を見るにつけこれだけ科学技術が発展しているにもかかわらず、その被害を食い止めることが出来ないのは何故であろうかと思う。自然との共存の仕方、または自然との闘いに不十分なところがあるのではないか、毎年繰り返される自然災害の被害を防げないのは何が原因であろうか。また、広島市内の土砂災害被害についても報道されている状況を見るにつけ金沢市も同じような自然災害が予測される。広島市では3000人の人達による72時間以内に人命救助をしたいという懸命な作業が今も続けられている。ところで大規模災害では少なくとも3日間は生存しなければならないといわれている。だけれどもそれを24時間以内に救助を行う方法は無いものだろうか。例えば住民の協力と自然災害の予測精度の向上、自然災害発生時前からの体制の拡充、IT等の科学技術の多面的利用および災害救援隊の迅速な派遣ということが可能ならばそれを実現できないだろうか。

 2、人命救助は時間の問題
 自然災害から救助するためには時間刻みではなく分刻みの対応が必要である。阪神・淡路大震災の多くは瓦礫の下での圧死であった。そして生存者は72時間以上経つとほとんどゼロ近くになっていた。すなはち、自然災害が発生してから、3日以上経過した後の救助は労多くして虚しさだけが残る、死体収容の時間だけが長期間続くということになる。勿論、2次災害を十分考慮しながらの救援活動が必要であることは言うまでもない。東日本大震災時も凍える手で3日間電信柱にしがみ付いていた2人のうちの1人が、救助された時の気持のゆるみで心臓麻痺で死亡してしまったという話も聞いている。報道機関のヘリコプターが、報道を優先したために救援活動が阻害され、救助が遅れたという話も聞いている。統計データでは災害による倒壊家屋等からの人命救助の場合、災害発生から72時間が経過すると生存率が急激に低下する結果が
出ている。主な理由は脱水症状と説明される。人間が水分を取らずにすむ限界は72時間であり、天候も大きく左右する。低温で水にぬれた状態が続けば、低体温症となってさらに厳しい状況となる。他の理由として救助までの時間を要すると、瓦礫の下敷きになった四肢が長期圧迫で筋細胞が壊死し、圧迫から解放された後に血液中に大量に漏出して急性心不全を起こすクラッシュ症候群が説明される。ところで市や県の危機管理課を尋ねて危険度予測地図をいただいた時も、市の体制を整えて救援活動を開始するためには3日かかるといわれた。これでは、ほとんど死体収容のための活動になってしまい市民の生命を守る活動にはならない。
 また、来年春からの北陸新幹線で東京と金沢が2時間30分で接続されるに伴い、外国人客を含め多くの観光客が来沢するのが期待される。また東京にアンテナショップを造って観光客の招聘を助長しようともしている。しかしもし観光中に自然災害が金沢で発生した場合、その人達から一人の犠牲者も出さないということは現状では保証できない。ちなみに観光マップを持ちながら歩いている観光客によく聞かれるのは、「この場所は何というところでしょうか。この地図のどこにいるのでしょうか」である。“拠点避難場所 00小学校 →”という表示では、外人観光客は理解できないであろう。金沢市役所のある広坂でさえ英語表示された道路標識がないから、その質問は仕方のないことではある。そのような不備な状態で観光客を呼び込んだらどのようなことになるのだろうか。最悪の条件で大雨が降っている、深夜、地震が来て山崩れや洪水や火災が発生した場合、どのようにしてその人たちを誘導するのであろうか。特に高齢化の限界集落になった町で市民は何ができるのだろうかと考えてしまう。ニュージーランドで起きた地震により、北陸三県の若い英語研修性が無言の帰宅を余儀なくされた結末を北陸の人であればだれもが知っているであろう。他国の人達にその不備を叱責することはできないが、すくなくとも観光客は事情をよく知らないのだから、命を安全に帰国させるのが金沢市民の責務ではないだろうか。金沢に観光に行った家族が不帰の人になって帰ってきたとなれば金沢観光の評判も落ちることになることだろう。我々は“観光客を含めて自然災害で一人の犠牲者も出さない”と決意し、常日頃から準備をしておくことが大切である。

2、最悪の想定(台風が来ていて、深夜、地震が起きた場合の対応)

  わが町でも各種防災・減災・避難シミュレーションをしながら来るべき自然災害に対応しようと考えている。わが町のおかれている条件は
①少子高齢者の限界集落である。若い人は少なく、老老介護の現状がある
②30軒以上あった小売店も今は5軒ぐらいしかないので、地域のコミュニティが造りにくい
③一軒家とマンションが共存しているので、連絡網が徹底しにくい
④浅野川が氾濫すると源太郎川が逆流し床上から、屋根下まで洪水が押し寄せる
このような条件は、旧金沢市内にはどこにもあり、そういう意味では典型的な町だと考えてもよい。
そこで町のコミュニケーションセンターとして、ご近所の高齢者が集まって月に何度か地域の歴史、文化、健康、科学、防災について話し合っている。

<歴史>

昭和28年8月24日に起きた浅野川大洪水により、床上浸水が発生し、どこまでその被害が及んだかを古老から話を聞いている。また平成20年7月28日に起きた堰の管理不備による大洪水の話も聞いている。そして現在の堤防の高さは昭和28年8月24日に起きた浅野川大洪水の水量(1時間で75mmの最高降水量)を基準にして造営されたとも聞いている。また、卯辰山山麓には土砂災害の危険性があるところがいくつもあることを確認している。それに関するハザードマップも危機管理課からいただきそれをベースに話し合いもしている。その際、常盤橋・天神橋・梅の橋を渡って卯辰山に逃げるという考え方は非常に危険だということが分った。

<科学>

 森本~富樫断層があるので、地震の際にはそこから火災が発生することが考えられる。それに対して風向きや発生場所により類焼する状況をある程度パソコンでシミュレーションすることが出来る。また土砂災害で浅野川がせき止められて現在の避難指定場所さえも水でつかってしまうことも推定される。またその指定場所さえも耐震構造になっていないことも知っている。天気予報による天神橋付近の水位計は常時ネットワークで確認できるが、それよりも上流でがけ崩れのために発生した洪水を検知できるか否かは不明である。IT技術を使って多くの市民の協力を得れば、全市の災害状況を迅速に把握できるのにも関わらず、その体制が出来ていないことも知っている。また防災無線や拡声器からの情報は雨でかき消されて何を放送しているのか、室内では不明であることも知っている。また、M7.9程度の地震が金石沖で発生した場合、最大3.4mの津波が押し寄せてきて、野々市・金石は津波の被害を受け、さらに県庁付近は海抜1.2mであるので県庁及び消防本部の機能が一部不能になることも予想される。従って、耐震構造の補強工事が施されている金沢市役所が拠点になるだろう。

<健康>

 病弱者や身体障碍者や高齢者の避難は地震時には分速20~30mであることが推定され、その避難経路も瓦礫等で塞がれていることを考えるとそれほど遠くには行けないであろう。また生命維持装置を付けての避難となる場合は、人でも必要である。避難経路及び避難場所をいくつもシミュレーションしておかなければ、最悪の場所に誘導することもおきかねる。

<避難訓練の実態>

 台風が来ていて、深夜、地震が起き、山崩れと火災と洪水が同時に発生するような条件で避難ができるものか否かを検討していない。また、避難場所も小学校や公民館ということになっているが、耐震構造の高層ビルを含めてその数を増加させねばならない。

このように、いろいろな課題があげられるが、事前準備をしておくことが出来れば24時間以内にできることを次に列記する。

 3、防災への事前準備と予測と24時間以内対応のために

 3-1)避難することを前提で検討

 多額の負債を抱えている市の財政では、堤防や河川の工事は重点的な所しかできないであろう。但し、新しく団地を造る予定の山間部や津波発生のもともと危険性があるところ(県のホームページの土砂災害危険個所並びに市の液状化危険度予測図参照)は住民の自助努力で対応を図るべきであることを明示する。その地域は住民と相談して早い時点での天気予報の確認と避難経路確保とを徹底するしかないと思われる。勿論がけ崩れなどの兆候は人間の五感と各種センサーでできるだけ迅速に伝えるようにネットワークの充実と避難訓練を実施する。また、旧市内においても避難することを前提にしておかないと想定外の災害が来た場合には堤防自体も頼りにならないと考えるべきではないか。たとえば浅野川の堤防の高さは61年前に起きた水害の総雨量を基準に増設されている。その時の最高降水量が1時間で75mmと防災史に記録されている。以後治水工事は進展していると思われるが、川底が高くなっているのではないかと常日頃危惧している。この頃頻繁に言われる50年に1度の集中豪雨が来た場合には恐らく浅野川は氾濫することになると予測される。その際市役所の避難警報発令以前より耐震構造を持つ高層ビル等の安全な場所への避難が必要となる。

3-2)各町内単位で科学的なシミュレーションを実施しておくこと

   河川の水位と堤防の高さのシミュレーションは市役所の土木課でもしていると思われるが、それを市民に公表して事前に避難できる目安を市民に説明しておく。それは100回に5回しか当たらない予測であっても、市民の判断で避難できるようにしておくことが必要である。市役所が避難しろと言わなかったからしなかったということではなく自己責任において避難すべきである。そのために必要なデータを公開し、事前シミュレーションを納得いくまでしておく。火災等は火点と風力が分ればパソコンレベルでシミュレーションできるので、そのソフトを事前に配布しておく。あとは自己責任にまかすこと。また、刻刻変化するデータを4000人程度の市民モニター制度(TWITTER、スマートホン等の利用)により市役所内のサーバーに蓄積し、自動編集加工したデータを市民のアクセスがあれば配信できるようにする。市民はそのデータや天気予報(気象庁のHPでの高解像度降水ナウキャストは250m角で降水量を表示予測している)や水位計や火災シミュレーションによって自己責任で避難をする。

 3-3)避難場所の確保

 阪神・淡路大震災以降、高層ビルの耐震化が普及しているので、一時避難場所として、条例でその場所を確保する。たとえば3F以上は避難場所としての通路とトイレの完備を条例で定める。またその場所の利用管理に関しては、指定された町会長や役員に委任する。出来れば、カード形式またはスマートホンで個人認証し、それが自動的に市役所に集まるような仕組みが良い。現在避難訓練時に町内でまとめている紙媒体では事務的処理に多くの時間がかかってしまう。

 3-4)災害救援隊の要請

 現在ヘリコプター搭載型病院船が幾隻存在するが、自然災害時は速やかに出動を要請し、金石沖からの支援救助作業を24時間以内に行う。また自衛隊の地上部隊、小松基地の航空隊の要請も行うが、津波で小松空港が使えないときは能登空港からの発進とならざるを得ない。いずれにしても、金沢市内にヘリコプターや工事用重機を運ぶオスプレーのヘリポートが必要なので、それは事前に準備しておかねばならない。また、報道関係者のヘリコプター等は災害時は禁止するようにするか、救助作業のための情報取集用機能として利用できるところを市が指定する。

 3-5)観光客や外国人への避難対応

 町内に英語のできる高齢者を養成する。常日頃は町の歴史の語り部であるが自然災害時には、観光客の誘導を指導する役割も持つ。この人たちは常日頃から災害シミュレーションを学習しており、その手順に従って誘導する。避難人数が多いときの対処については、多くの避難ビルを利用して3日間だけでも生命の安全を確保する。

 4、市議会への提案

 *大雨(台風が来ていて)が降っていて、深夜、地震が発生し、がけ崩れが生じて、火災が各所か  ら起きた場合の想定で市として24時間以内に何ができるかを検討してほしい。それを、明確に  していただければ、市民としてもそれぞれの自己責任で避難が可能である。できないことを要求  しているつもりはありません。

 *各種予測システムを市民にタイムリーに迅速に公開・連絡してほしい。我々はそれに基づき町会  としての避難場所、経路を自己責任で選択する。

 *外部の救援隊(自衛隊のヘリ搭載型病院船空母及び金沢駐屯の自衛隊)の出動を速やかにするため、災害発生前からの情報収集と体制の準備を充実してほしい。激甚災害が指定されなければ動けないというようなことであれば国の法律を変更してもらいたい。できれば、野々市市に在住する市の職員の旧市内への移転を促進してほしい。野々市市は防災ハザードマップでは状化現象を起こす町になっており被害にあうと市役所に駆けつけることはできないと思われる。

 *これからの新築高層ビルには避難場所としての役割を明確にし、3階以上のオープンスペースに  飲料水・トイレ等を設置することを条例で定める。

 *スマートホンやポータブル端末を利用した市民モニター制度(日常は認知症患者の連絡網や道路  の破損情報等を逐次連絡する)を設立し、現場で安全を確保したうえで現地の情報(写真、
  TWITTER等)を収集し、自動編集するシステムを構築し、迅速にその情報を市民に公開す  るようにしてほしい。

 *地震、津波、火災、がけ崩れ、洪水のパソコンレベルで可能なシミュレーションプログラム(国の防災研究所等で配布しているものもある)を市民に配布する。

 *救助を円滑にするために、個人のスマートホン連絡網を拡充する。勿論個人情報保護 法にこだわ  る人は、この限りではないが、エントリーした人を優先的に救助することを伝えておくことが望  ましい。救助で一番時間がかかっているのは所在の探索であるのでそれを迅速にできるシステム  を構築する。

 *避難拠点ではヘリコプター等のヘリポートを設置してほしい。陸上では物資や重機の運搬が不可  能であることが発生するであろうし、かつ救助活動を行いやすい都市づくりにしておいてもらい  たい。

 *避難訓練時には分刻みで何ができ何ができないかを明確にし今後の施策に生かしてほしい。特に  深夜の防災訓練を賛同が得られる町会の少人数でもよいから実施して、分刻みの状況をモニタリ  ングし、今後の避難・避難訓練・マニュアルに生かしてほしい。

 *想定外の自然現象が発生しやすいので、重点的な土木工事も必要ではあるが、むしろIT化の充  実による避難誘導を先行させてほしい。負債を抱えた市の財政を考えると仕方のない選択ではな  いかと思われる。

5、おわりに

  自然災害が起きた時、24時間以内に何ができるかを市議会で検討していただきたい。歴史的、科学的に物事を検討し、金沢から自然災害では観光客を含め一人の犠牲者も出さない町づくりを宣言しそれを実行すれば、金沢は“世界で一番幸せな町”になれる。そして同時にその技術ノウハウを輸出し、世界の人々に貢献できる市になるものと確信している。人を殺す戦争に経費を使うよりも、人を生かす施策に経費を使う町づくりをしてほしい。