「”1/f ゆらぎ”発見からの歴史」  No.2
 1925年アメリカのジョンソン博士が真空管のノイズを測定しているときに、周波数が低くなると大きな振幅を持つ不思議な現象を発見しました。当時はジョンソン雑音といわれ、電子工学の分野でいろいろな研究が進められていましたが、1977年になってボス博士がクラシック音楽等の中に“1/fゆらぎ”が存在することを確認し、それ以降、自然や社会の中におけるゆらぎ現象が注目されるようになりました。丁度、これと相前後してIBMのマンデルブロー博士がフラクタル幾何学を提唱するに至って、自然界のフラクタル性に強い関心が寄せられるようになりました。すなわち、自然の営みを調べると、長期間のスパンでも1/fゆらぎのパターンが存在し、または短期間の中にも1/fゆらぎのパターンが存在します。あたかも入れ子構造を持つこけし人形のように、自己相似性の繰り返しパターンが自然の中に潜んでいることが分かってきました。日本では
/fゆらぎ研究の第一人者として東京工業大学の武者教授をはじめ茨城大学の安久教授ほか、情報工学、電子工学、医学、遺伝学、建築学等々、様々な分野の方々がアプローチしています。

「”1/f ゆらぎ”の製品化」

当時松下電器ではヒューマンエレクトロニクスを掲げ、人間を中心に置いた製品の開発を行っていますが、それを技術者の立場から実現するには、どうすればよいのだろうかと考えていました。ヒューマンエレクトロニクスの目標の1つとして、科学技術を通して自然と人間の融合を図るといわれていたと思います。自然に何度も目を向け、その中にある自然の法則を利用し、しかも人間にとって穏やかさとか、優しさなどの感性的な評価を満足する製品を自然のゆらぎの現象を基にして創ってみたいと考えていました。それがヒューマンエレクトロニクスに対する我々技術者の一つのアプローチでないかと思っていました。確かに当時AI・ファージィ、ニューロ技術によるアプローチも考えられましたが、何かもっと自然に根ざすところのものからアプローチすることが重要な気がしていたからです。  
 1987年松下技研(株)の佐治博士と2人で小田急線の向丘遊園駅前に駐車した車の中で、今まで研究してきた夢を実現させてみようと話し合ったことが発端となり、事態は急に現実味をおび、ゆらぎ研究会の発足に至りました。そして研究開発から製造・宣伝、営業までの夢を話し合いました。大会社はえてして、新しいテーマには賛同を得られがたいという例に漏れず、松下でもこのような新しい視点からの技術を理解する人は小人数でした。そこで、社内外への宣伝を行うことを手始めに、活動を開始しました。やがて、新しい何かをやりたい有志が、一人二人と集まり、研究から製造・宣伝、営業の人たち数十人の大所帯になりました。

「”1/f ゆらぎ”の製品化」(扇風機)

19884月に第一弾商品として“1/fゆらぎの風”の扇風機が発売になりました。この扇風機は、自然の中で優しく吹く風を扇風機の中に採り込んだもので、当時1/fゆらぎという聞きなれない言葉のせいもあって、マスコミ、テレビで様々に取り上げられました。宣伝部門から“風“というものを視覚的に見れるようにしてくれないかと言われたことがありました。往々にして我々技術者は風圧を図りそれを電気変換して、オシロスコープか何かで見せるという方法をとってしまいがちですが、扇風機を横にして風船を風の中に浮かべることにより、従来の扇風機と明確に目で比較できるようにしたのは、営業の人のアイデアでして、多様な職能メンバーの集まりの賜でした。それ以降、1/fゆらぎを説明するために、風と風船はテレビの放映では切り離せないものになりました。

1/f ゆらぎの世界
1/fゆらぎの扇風機
兼六園の「琴路灯篭」
入れ子構造のベリョウスカ